Corporate Governance: 会社は誰のもの?

Corporate Governanceで、Circonという会社のケースを扱った。


AuhllはHBSでMBA取得後、Applied Magneticsに入社、その中のCirconという部門で頭角を現す。LBOで独立し、CEO兼Chairmanとして、ACMIという会社を買収して業績をターンアラウンドさせるなど、活躍していた。しかし、ふたつ目に買収した会社のターンアラウンドがうまく行かず、株価が低迷し始める。そんなある日、プライベートで知り合いだったU.S.SurgicalのHirshに敵対的買収を仕掛けられてしまう。


Auhllは直ちにポイズンピルホリエモンで話題になった)やゴールデンパラシュート(幹部を退職させようとすると莫大な報酬を払わないといけない。Auhllは幹部だけでなく多くのemployeeにも範囲を設定したためシルバーパラシュートと言われた)を設定し、防衛に努める。これが功を奏し、長期戦の様相を呈し始める。


ここからは泥沼な感じのバトル。ポイズンピル発動手前の14.9%まで獲得したSurgicalは、取締役を二人送り込み、代理戦争をはじめる。このときにそれぞれ(CirconとSurgical)がCircon株主に宛てて送った手紙が資料についていたので読んでみたが、なまなましくて面白い。Circonは「Surgicalが設定している買収学は安すぎる。今の経営方針でもっと株価は上がるから絶対にTender offer(株式公開買付け)に応じてはならない」。Surgicalは「今の経営をみろ。ずっと期待を裏切られっぱなしじゃないか。この値段で応じたら絶対得」、と譲らない。


実際、Circonは(Auhllは)なかなか業績を上げられず、説得力が弱まっていく。しかもこの買収騒ぎで営業部隊がバンバン離職。そこへSurgicalはジリジリと設定金額を下げ、心理戦を仕掛けてくる。次第に株主から、「俺、売りたいんだけど」「ポイズンピルとか邪魔なんだけど」と不満が出始める。


要は、Auhllは自分のポジションを守っているだけで、株主価値の最大化のためにはうまく機能していないのだ。なぜなのか、というところがこのケースのキモのひとつだが、結局自分でLBOして育ててきた会社、ずっとCEOだった会社ということで、「俺のモン」くらいに思っているのだろう。しかしそれは取締役会の本来の役割、「株主の代理人として株主価値向上のために尽くす」ことと相容れない。


結局、Surgicalは別の会社に買収されたのを機に敵対的買収から撤退、Auhllは勝利を宣言するが、株価は地に落ちる。株主からは「お前いい加減にしろよ」という手紙がバンバン来る。そこでAuhll以外のボードメンバーとしてどうしますか、という問いかけられるのだが、まあとりあえずAuhllはクビですな。ただ、ボードメンバーのほとんどはAuhllが連れてきた友達とか知り合い、そして思い悩むはAuhllの親友でありHBSのクラスメートであるCloutierと、一筋縄ではいかないジレンマを設定してあるのだけれど。


株主、取締役、買収を仕掛ける会社、投資銀行、経営陣、従業員など、それぞれの思惑、利害が複雑に絡み合って、なんともおどろおどろしいドラマを演じているのだなあと、野次馬的根性で楽しめたケースでした。