Applied Price Theory: Amazonの中古本は著者にとって得か?


Applied Price Theory(要はミクロエコノミクスの授業)で、「一見正しそうに見えるプライシングでも、実は間違っている」ことについて、例を挙げていくつか教えてもらった。映画館のポップコーンの例も面白かったのだが、以下、本の購入に関する例。


問題:

設定として、本の価格60ドル、2年間は使える。1年後に売ったとして売却価格は22ドル。ディスカウントレートは10%。本のmarginal cost(限界費用)は30ドル。


消費者として、1年間だけ使用する場合、60ドルで買って1年後に22ドルで売ることになる。22ドルを現在価値に換算するので、60ドル−22ドル/110%=40ドル、が1年間の使用にかかる適正価格となる。逆に言うと消費者は1年間の使用に40ドルまでしか使いたくない。


さてここで、大発明の知らせが。1年後に自動的に消えるインクが発明された。これを使えば中古本市場は消えうせる。この特許の権利を、いくらで買い取るか?


答え:

インクがない状態での利益は(N人が本を購入するとして)

N/2人 × (60−30) = 15N
(2年ごとに本が中古市場に出回るため、新品購入者はN/2人)


インクがある状態だと

N人 × (40−30) = 10N
(中古市場がないためN人全員が新品購入。ただし、中古市場がないため、1年間使用する場合の適正価格である40ドルまでしか消費者は払わない)


と、特許の権利を買うどころか、インクを使ったら損をする。

もちろん、限界費用や中古価格の設定によって結論はいろいろ変わるのだが、ポイントは中古市場の存在が買い手だけでなく売り手にとって有利に働く場合があるのだということ。AMAZONマーケットプレイス(中古)サービスに対し、著作者が「あんなことしたら俺の本売れねえだろ」と文句をつけたところ「あれスタートしてからあなたの本の売り上げ上がってますが何か」と反論されたという。


エコノミクスを勉強したことのある人には「当たり前の話じゃん」と思われるかもしれませんが、僕にはとてもeye-openingで面白かった。