BRI: クラブ活動としてのコンサルティング

以前のエントリ(こちら)で述べた、Big Red Incubatorというジョンソンスクールのクラブ組織で、イサカ周辺の中小企業およびスタートアップへのコンサルティング活動を行っている。


現在のクライアントは、ウン十年前にコーネルのエンジニアリングスクールでPh.Dを取得した人が始めた社員3人の小さな会社。その人はすでに齢70くらい(推定)、その人の息子、及び友達のおばちゃんという社員構成。イサカから車で15分くらいの自宅にオフィスを構えている。


プロダクトは、バブル製造機。なんのこっちゃと思われるかもしれないが、ご心配なく、僕もそう思った。エンジニアリングで学んだスキルを活かし、特別なMethodで小さな泡を作り出し、その泡がなかなか消えずに、空気中を舞うことができる。それにより、空気の流れを視覚でとらえることができる、という機械を作って売っている。


誰がそんなの買うの?と思われるかもしれないが、僕もそう思った。しかし、意外と顧客層は幅広く、排気口の設計をしたい自動車製造会社、ジェット機製造会社、パソコンメーカー、それからエアコンなどを作る電機会社、大学・研究機関など。世の中いろんなものがあって、いろんな需要があるもんだなあとしみじみ思う。


で、コンサルタントとしての僕の役割は、彼らの今後のマーケティングプランを提案すること。そもそも技術オリエンテッドで、持っている空気流・泡の知識を製品にしただけで、戦略も何もない会社なので、問題および改善の余地はいろいろある。最初に、数ヶ月、数回にわたるインタビューを行い、何が問題なのかを浮き彫りにすることにした。インタビューしていても、70歳のおじいちゃんはすぐ昔話を始めるので(20年前、こんな客がおってのう・・・わしはそのときこう言ってやったんじゃ・・・などなど)核心の話を聞きだすまで苦労した。


問題は大きくふたつあって、ひとつは彼らの製品があまりに独特すぎて顧客の理解・トライアルを得るまでにものすごく時間とリソースがかかるということ。もうひとつは、そういう時間のかかる客にひとりひとり丁寧に応対しているので、結局間接コストがかかり、効率が悪いということ。


そこで、いかに少ない人数・リソースで効率的にマーケティングを行い、効率よく理解・トライアルさせ、手間ばかりかかる客をふるい落としていくかという視点でマーケティングプランを書いていった。たとえば、このプロダクトは空気流の研究に使える。過去の顧客について調べて、そういう用途でこのプロダクトを買っていった研究機関があったからだ。そこで、ハリケーンなどの災害を救助するNPOとアライアンスを組んで、それを研究する機関にNPOから売り込みをかけてもらい、もし売れたら利益の何パーセントかをNPOに寄付するという契約をかわす、など。


いずれにせよ、クライアントの話をしっかり聞き、適切な質問をし、何が問題なのかを見極め、一緒にブレストすることでフィジビリティを確かめながら議論していったので、僕の提案は彼らをそれほど驚かすことは無いと思う。というのも、この提案はほぼ、クライアントと一緒に作り上げたものだからだ。ブレスト中は僕からも意見を出したが、クライアント側からもいいアイディアがポンポンでて、とても充実していた。クライアントと一緒にそういうアイディアを作り上げていくプロセスはとてもエキサイティングな体験だった。


結局、一番そのビジネスに詳しいのはクライアントで、コンサルタントは客観的にビジネスを見れるように整理してあげて、問題を指摘し、クライアントがいい解決策を見出すようにインスパイアしてしてあげるのが適切な立ち位置なのかな、と感じた。


クラブ活動だけでなく、去年Brand Management Immersion(何のこと?というひとはこちら)でも、ボストンの楽器メーカーに提案する機会があったし、バークレーの友達と話したときも、授業の中で地元企業へのコンサルティングを行う機会があったと言っていた。こういう、実践的に学ぶ機会がたくさん転がっているのは、ビジネススクールのとてもいい点だと思う。また、地元のコミュニティに貢献し、コミュニティの中で助け合って存在するというアメリカ的考え方?を体感するという意味でも、いい機会だと思う。