Applied Price Theory: 人が犯しやすい間違いいろいろ


Robert Frank教授によるApplied Price Theory(エコノミクス)の授業より。今日は'Natural Stupidity'つまり人間が本能的に陥りやすい誤りに関して。


・Representativeness

「必要になるかもな、捨てても良いかな」と迷いながら捨てたものに限って、翌日にも必要になる


「もう妊娠しないかも、とあきらめて養子をもらった直後に妊娠する話をよく聞く。養子をもらった後って妊娠率上がるのではないか」

これらは、本当はもちろんそんな法則はないにもかかわらず、そういった印象を形成してしまいがちな例。つまり、迷いながら捨てたものが必要になってしまうとものすごく印象に残るが、迷いながら捨てたものが結局必要なかった場合は普通に忘れ去ってしまうので、前者のケースのみが印象に残り、そんなことばかり起こっている様に思えてしまう。俗に言うマーフィーの法則


・Base rateを忘れ、イメージ、感覚で判断すると間違える

ある人がタクシーのひき逃げの目撃証言をした。その人は、「タクシーは青色だった」という。別途テストしてみたところ、その人がタクシーを青色だと判別できる正確性は80%であった。ちなみにこの街には緑のタクシーが85%、青いタクシーが15%いる。彼の証言の信用性はいくらくらいか。

実際に青を見て青と証言する確率 = 15% x 80% = 12%
実際は緑なのに青と証言する確率 = 85% x 20% = 17%


彼の「タクシーは青だった」証言の信用度 = 12%/(12%+17%) = 40%ちょっと


・適当な数字を基準にしてしまう

「アフリカの国のうち、何パーセントが国連に加入しているか」という問いがある。被験者に対し、この問いに答える前に、それとはまったく関係なく数字の並んだWheelをまわしてもらう。そのWheelは10または65のいずれかの数字に停まるようになっている。驚くべきことに、10に停まった場合、多くの人が問いに対し「25%」と答え、65に停まった場合、多くの人が「45%」と答えた。

まさか、と思われるかもしれないが、人間は無意識のうちに適当な情報をピックアップして使っているのである。


・Weber-Fechnerの法則

すぐ近くのお店で20ドルで売っている目覚まし時計が、車で20分のところにあるお店だと10ドルで売られています。どちらで買いますか。

これには多くの人が安いほうのお店まで行くと答える。しかし、

すぐ近くのお店で2510ドルで売っているパソコンが、車で20分のところにあるお店だと2500ドルで売られています。どちらで買いますか。

これには多くの人が、近くの店で済ませると答える。しかしエコノミクスの大原則的には、どちらの答えも同じになるはず。


・比べるものがあると選びやすい

キャンパスまで歩いて3分で家賃1000ドルのアパートと、キャンパスまで車30分で家賃400ドルのアパートがある。どちらにしますか。

仮に、この場合、メリットとコストの差が完全に同じで、どちらの魅力度も同じくらい、つまりどちらの家を選ぶか決められないとしよう。しかし、ここで

みっつめのチョイスは、キャンパスまで歩いて5分で家賃1200ドルのアパート

という比較対照があると、多くの人が’歩いて3分で家賃1000ドル’のアパートを選択する。みっつめのチョイスと比較して、この物件は明らかに条件が良いから急に選びやすくなるのだ。これもエコノミクス的には本来おかしな話なのだが、そういう傾向がある。


・言い回しによって受ける印象に左右される

600人の人が危険にさらされています。そこで

パターンA; 確実に200人を助けることができる
パターンB; 600人を1/3の確率で助けることができるが、誰も助けられない確率が2/3ある

この場合、期待値は一緒だが、72%の人がAを選ぶ。しかし、

パターンC; 400人が確実に死ぬ
パターンD; 誰も死なない確率が1/3、みんな死んでしまう率が2/3

これだと78%の人がDを選ぶ。勿論、AとC、BとDは同じことを違う表現で言っているだけなのに。


これらの誤謬は、マーケティングへの応用がいろいろ考えられる。売るときの表現(とても単純な例だけど、「在庫10個あります」より「あと10個でなくなります」のほうが購買意欲を煽りそう、とか)、売りたいもののプライシング(売りたいものに対し、比較しやすくしかも条件の悪い商品を設定することで売りたい商品を買いやすくさせる)、ディスカウント/クーポンの活用の仕方、などなど。また、逆に消費者としては、だまされないよう常にエコノミクス的考え方で物事を見るようにしないと。