Consumer Behavior: レーガン大統領の選挙戦略

Yoda2006-02-09


Consumber Behaviorの授業で、1984年のレーガン大統領の再選時の選挙戦に際して展開されたマーケティング戦略について学んだ。


84年の選挙を控え、レーガンの支持率は対立候補のモンデールに肉薄されてきていた。そこで、メディアリサーチ、アドバタイジング、コンシューマリサーチの専門家チームを使い、レーガンマーケティング戦略を立てていく。


彼らは、まずグループインタビューを中心とした定性調査を行い、コンシューマ(この場合、選挙権を持つアメリカ国民)が

・最終的にどのような目的に沿って投票するのか
・それを構成する下位の要素は何なのか
・さらにそれを構成する下位要素は何なのか

といった形で、国民が投票する決定要因を個々の因子にブレイクダウンしていき、それぞれのリンクがどうなっているかを描き出す。


たとえば、この場合、投票する最終の目的は「アメリカ及び世界を次世代にむけてよりよくしてくれる」こと、それを達成してくれそうな候補に投票すること。そしてその目的は、「アメリカをよりよくする」ことと「世界和を維持する」という2つの要素に分解される。さらに、「よりよいアメリカ」は、「経済回復」「社会問題」などのより細かく具体的な要素にブレイクダウンされていく。


全体の要素とつながりがあきらかになったところで、それぞれの要素がレーガン側の支配する要素なのか、モンデールのものなのかを調べる。たとえば「政府予算の削減」や「国家防衛の準備」といった要素ではレーガンがモンデールを上回っているが、「教育問題の改善」や「社会保障問題」ではモンデールが優位、といった具合だ。


それが明らかになると、今後のキャンペーンでどの要素を取りに行くかを考える。まるで将棋みたいだ。たとえば「自分および子供の将来の保障」といった大きな要素が、いまどちらのものでもないが、その下位要素である「個人の機会確保」はレーガンが、「人々のケア・手当て」はモンデールがおさえている。ここはひとつ、「個人の機会確保」をさらに強めるメッセージを伝えて上位の「自分および子供の将来の保障」を取りに行こう、といった具合。


さらに気をつけなければならないのが、下位要素を抑えていても必ずしも上位要素につながっているとは限らないことだ。「国家防衛の準備」という下位要素はレーガンがおさえているが、それが上位要素の「世界平和の維持」にかならずしも結びついているとは限らないので、メッセージを流す際には「国家防衛の準備」が「世界平和の維持」にどう結びつくかを説得できるメッセージにしないといけない。


どういったメッセージを流すべきかクラスで議論したが、だいたい
「キャンペーン期間が短いので、レーガンの強みを活かせる要素を使いその上位要素につなげるメッセージを流して強みを最大限に活かすメッセージにすべき」という意見が多かった。僕も基本は同意なのだが、このフレームワークは定性オンリーなので、「どの上位要素が最終目的の決定のために重要なのか」がある程度定量的にわからないと苦しいな、とも思った。レーガンの強みの上位要素が、最終目的決定に対して影響を与えないとすると、そこにリソースを費やしても仕方ないからだ。


議論の後、実際のTVCMなどでメッセージを確認する。だいたい議論に近いメッセージだったが、ひとつだけずっと熊の映像というわけの分からないものがあった。熊はソ連の危険を象徴していたらしいが、それは苦しいだろ。


ともあれ、一般企業のマーケティング活動だけでなく、こういった政治の分野でもこんなマーケティングをやっているのだと知り、少なからず驚いた。けっこう応用利くのかな。飽きっぽくて今後の進路がどう転ぶかわからない自分としては、ビジネスだけでない問題解決能力を、ぜひ身につけていきたいものだ。


おまけ:レーガンはB級俳優出身というバックグラウンドのせいか、スピーチがとてもうまいし、なんと言うか多少大げさな演技・演出が入っていて、聞いていると結構面白い。ご興味おありの方は、下のサイトから聞けます。でもやっぱり僕としてはケネディの演説、特に「月に行こう」演説が一番好きだけど。


http://gaikoku.info/english/president.htm