Follies:コメディ祭

Yoda2006-05-06


ジョンソンスクールで毎年行われているFolliesというイベントが昨日あった。これは、生徒・教授がコメディ・寸劇・歌・ダンスなどを披露し、みんなでそれを楽しむイベント。8割方は2-5分程度の映画(あらかじめ撮影したものを上映)、残りは歌・ギターなどのライブ。学生の自主制作のくせに生意気に劇場を借り切って上映する。10をゆうに越える作品が集まった。


内容はだいたい学校生活、教授、自分達をネタにしたもの、パロディにしたものなどが多い。個人的に秀逸だと思ったのは、2年生に双子の兄弟がいるのだが、この兄弟をネタにした映画。どちらも優秀で、しかも瓜二つ(双子だから当たり前だが)な兄弟なのだが、映画の中では兄ばかりひいきされ、いい思いをするため、ねたんだ弟が兄を殺害、デートの相手を奪うという内容。この双子がとてもみんなから愛されるキャラクターなため、いっそう笑えた。


僕は1つの映画に役者として、もうひとつに役者・製作チームの一人として参加。ひとつはインド映画風ミュージカル(?)で、もうひとつはブラピ主演の「ファイトクラブ」のジョンソンスクール版パロディ、というものだった。ファイトクラブのほうでは、オペレーションのRobinson教授に出演をお願いし、顔に血糊をたらした僕とアトリウムで闘ってもらった。


彼に限らず、教授陣の参加に対する積極性は目を見張るものがある(出たがらない人も勿論いるが)。Dean(学長)をはじめ、人気教授が忙しい合間を縫ってビデオ出演しているのを見ると、コーネルだなあ、という感じがする。また、10人ほどの教授はピアノつきの歌のライブを披露、自らの教える内容をパロディにするという反則すれすれの内容で大ウケを取っていた。しかも、最後には愛校心を煽り立てるような歌詞内容、あざといと思いながらもジーンとしてしまった。そのまま寄付求められるんじゃないかと疑った。


上映会の後は近くのバーでパーティ。卒業まで、思いっきり楽しみたい。

イサカ古本祭

イサカで古本のフェスティバルが行われている。Friends of the Tompkins County Public Library Book Saleという名の祭りで、Webサイトはこちら。http://www.booksale.org/ 


この祭、公立図書館の主催で、ボランティアを中心に運営されているが、20万冊くらいの本が売られ、全米で第三位の規模の古本祭らしい。人口3万人かそこらのイサカでそんなことが行われるなんて意外だが、コーネル大学生とその職員だけで相当な人数がいるわけで、本の売買のマーケットは大きいのだ。


この古本祭、何週間かにわたって、週末のみ開催と言う形で行われるのだが、だんだん値段が下がっていくという仕組みになっている。従って後のほうで買ったほうが得なのだが、はやく買わないとほしい本が売れてしまうので、なかなか戦略が難しい。ちなみに今日の時点でハードカバーは一冊2.5ドル。最終日はスーパーマーケットの袋一杯で1ドルという鬼のような安さになる。


ちなみに今日までに買った本は以下の通り。


・Only Paranoid Survive (Andrew Grove)
・Maestro (Bob Woodward) →グリーンスパンについての本
・Who says elephant can't dance? (Louis V. Gerstner)
・How We Got Here(Andy Kessler)


最終日にもういっかい行ってみようと思う。

BRI:プロジェクト終了

Yoda2006-04-29


地元の企業へのコンサルテーションを行うクラブ組織、Big Red Incubatorのコンサルタントとしての活動が終了した。以前紹介した(こちら)バブル製造機の企業へ、今後ターゲットとすべき業界、活用すべきチャネル、プロモーション、及びカスタマーリレーションシップの改善などを盛り込んだ提案をプレゼンした。大層なプランはいくらでも描けるが、制約条件としてこの企業は従業員が創業者のおじいちゃんを含め数人しかいない、典型的家族経営であり、使えるリソースが極端に限られている。そこを前提にしてとりあえず可能なことからはじめ、徐々に成長させていくプランを考えるのは結構チャレンジングだった。


しかし考えてみると彼らはほぼ同じプロダクトを30年以上に渡って売り続けており、今もプロダクトがある程度売れていて会社が存続していると言う事実はものすごく偉大である。プロダクトライフサイクルも何もあったものじゃない。極めてニッチで特殊な技術・商品に限定した結果、CompetitorやSubstituteの脅威にそれほど晒されずここまで来れたのだろう。ここに少し工夫すればそれなりの成果が望めるのではないか。(そして企業の規模を考えると少しの成果でも十分なのだ)


十分に時間をとって戦略を議論しあい、一緒に練って作ったようなプランだったので、プレゼンも当然快く受け入れてもらえ、お褒めの言葉をもらった。その後今回の直接の依頼主であるコーネル大学テクノロジーセンター(http://www.cctec.cornell.edu/)のマネージャー及び僕の引継ぎ者も交えて
Triphammer mallのレストランで一緒にランチ。なんだかんだで1年近くのプロジェクトだったので、感慨も深いものがあった。

Data Driven Marketing: O'Nealケースのプレゼン

Yoda2006-04-28


Data Driven Marketingはいくつかのケースを扱ったが、ケースのたびに1チームがボランティアでプレゼンテーションを行う。うちのチームは最後のケース、O'Nealのケースにおいてプレゼンを行った。


ケースは、製薬会社であるO'Nealのマネージャーが主人公。チャネルであるSimpsonが顧客データをもとに開発したFrequent purchase programにお金を払って参加するかどうかの意思決定を行うというものだった。Frequent purchase programでは、顧客のデモグラフィックな情報を分析でき、リストをまとめ買い/もしくは希望顧客の分だけ顧客リストを購入する。購入したリストの顧客に対し50セントのクーポンを送り、顧客がO'Nealのプロダクトを購入してくれることを祈る。


<O'Nealのベネフィット>
今までNon-userだった顧客がO'Nealのユーザーになる。期待できる購入額、及びクーポンを使って顧客となってくれる確率をデータから分析、計算しなければならない。


<O'Nealのコスト>
顧客リストの費用。まとめ買いだと一括で$25,000、希望顧客ごとに買うと一人25セント。クーポンの費用(顧客がクーポンを実際に使ったときのみ)。クーポンを送付する費用(一人50セント)。


エクセルで4000人分のサンプルデータが与えられ、Regressionなどを用いてクーポンを使ってくれる確率を計算。さらに、過去のデータから期待できる購入額を計算し、それにプラスしてRetention rate(顧客が継続して買ってくれる率)とDiscount rateを使って顧客ごとのLife time value(O'Nealにとっての顧客の生涯価値)を計算し、費用を差し引いて顧客ごとのProfitabilityを見る。この際リストの買い方で顧客によってProfitableか否かが違ってくる。すべての顧客からのProfitをたし合わせ、リストを購入するに値するかどうか判断する。


分析手法自体にはそれほど真新しいものは使わなかったものの、最後のケースと言うこともあって、Practicalでややこしい設定を解きほぐすのに骨が折れる問題だった。また、単純なデータ分析に留まらず、ManufacturerとRetailの力関係、Competitor(他製薬会社)の動向など、ゲーム理論的な要素も考慮に入れて総合的な判断を下す必要もあり、とても面白いケースだった。


プレゼンの後、チームメンバーで集まり、イサカの表参道とも言われるイサカコモンズというエリアの「Simeon's」で乾杯。イサカコモンズには最近スターバックスまでオープンしていて、「スタバの出店戦略は大丈夫か」などと善良なイサカ市民を逆に心配させている。(嘘、みんな素直に喜んでいる)ビジネススクール最後のケース、最後のプレゼンかな、と思うと寂しさもあったが、ビールを飲むとすぐにそんなことは忘れていた。

Googleの財務シミュレーション:Microsoft、Yahooとの比較

かのisologueさんのところでGoogleの財務分析をされているのを見て、秋学期にDisruptive Technologiesの授業でGoogleの戦略に関してプレゼンした際、我々も財務分析をやったことを思い出し、昔の資料を引っ張り出してみた。


isologueさんのところでは、2009年に売上げが50Bドル、Net Incomeが13Bドルと予想されている。(アメリカ広告市場規模に関し修正が入って数字が変わりそうだが)


一方我々は、2009年に売上げを20Bドルとコンサバな予想。広告分に関しては12Bドル。我々はこれにプラスして、約8Bドルの純粋広告以外分の収入を予想。Classified(Google Base)、及びFroogleなどのサービス系、Google mapsGmail、その他のアプリケーション系などがここに含まれる。2005年で既に6Bドルの売上げを上げていること、及び90%を越える成長率を考えると5年で3倍強は弱気かもしれないが、Yahoo、Microsoft、eBayなどの苛烈な反撃を加味してコンサバ目にしておいた。


GoogleのR&D費の対売上げ比率は、約7%。これに対し、Microsoftは15.5%、Yahooは10%と、ともにGoogleを越えている。これは結構意外。isologueさんは研究開発費がこのまま伸びていくのかに疑問を呈されていたが、MicrosoftはR&Dに6Bドル(7200億円ほど)使っているわけで、ぜんぜん問題なく増やせるのでは。むしろ組織の肥大化等に伴いR&Dの効率が下がっていき、逆にR&D費率は増えていくかもしれない。


ちなみにAppleは3.8%(2005年)で、これらの企業群のなかで極端に低いにも関わらず、我々をエキサイトさせる商品を飛ばし続けている。Windows Vistaの有様を見てもわかるように、どうやらR&D費をかければそれでいいというわけでもないらしい。「イノベーションは、研究開発費の額とは関係がない。(中略)大事なのは金ではない。抱えている人材、いかに導いていくか、どれだけ目標を理解しているかが重要だ」とジョブス聖下もおっしゃっておられるし。


Microsoftがセールス&マーケティングに21.8%、General&Administrativeに10.5%かけているのに対し、Googleはそれぞれ7.2%、5.5%と低い。GoogleはほとんどWeb上の口コミで宣伝費をかける必要なく新サービスをアピールできるし、フラットな組織で管理職によけいなコストをかけていない。ちなみにYahooはそれぞれ10.4%、6.1%。Googleよりは効率が落ちるが、MSよりずっと良い。
(ただしMicrosoftは法人ビジネスの比率が大きいなど、単純にGoogle,Yahooと比較することはできない)


今後は、組織が急速に巨大化している中で現在のようなスピード、カルチャー、イノベーションのクオリティを保てるか、オンライン広告が頭打ちになる前に新しいビジネスモデルを提示できるか、などが見所になるのでは。

Data Driven Marketing : Conjoint Analysis

Data Driven Marketingの授業もいよいよ大詰め。Marketing Researchの授業でも最も重要と教わったConjoint Analysis。これは、カスタマーに商品のある要素をいくつかセットした選択肢を評価してもらい、Regressionしてどの要素が重要なのかを見極める分析。たとえば、

<ノートパソコンでの例>
オプション1 ブランド:東芝 メモリ:512MB ハードディスク:40GB 値段:17万円


オプション2 ブランド:ソニー メモリ:1G ハードディスク:40GB 値段:20万円


オプション3 ブランド:デル メモリ:512MB ハードディスク:20GB 値段:14万円


などのように、その商品にとって重要と思われる要素を抜き出し、それぞれを組み合わせたセットを作って選択肢とし、ユーザーに評価(たとえば、買いたいと思う順に並べてもらうなど)してもらう。(例の場合だと他にチップとかOSとかサイズとか重さとかバッテリーの時間などが重要要素として考えられる)


その後、ユーザーの評価をもとに、評価をDependent variable、各要素のDummy variableをIndependent variableとして、Regressionを行う(エクセルを使ったとても単純な作業)と、どの要素が購入決定要因として重要なのかが一発でわかる。これにより、例えばメモリを1GBに増やすことで値段をいくら上げることが可能なのかといった意思決定や、新しいノートパソコンを作る際にどういったスペックにすべきかなどの新規商品企画、また競合と比べてどの程度シェアを獲得できるだろうかなどの見積もりなどの手助けとなる。


とても感覚的に概念をつかみやすい上、応用範囲が広くて便利なConjoint Analysisだが、いくつか欠点もある。まず、人は必ずしもいくつかの要素を個別に評価して購入意思決定をしているわけではなく、それらが集まった総体を一個の商品として判断するので、食い違いがある場合があるということ。また、調査設計の際重要な要素を忘れていると役に立つモデルが出てこない。


とはいえ、便利で役立つこのAnalysisは、Gupta教授も「Data Driven Marketingの中でひとつだけ覚えておくべきものを選ぶとしたらコレ」と言う。しっかり身に着けておこう。

イノベーションへの解(「イノベーションのジレンマ」続編)

Yoda2006-04-16


ハーバードビジネススクールのクリステンセン教授のベストセラー「イノベーションのジレンマ」の続編。これ、もともとInnovator's Dilemmaというタイトルだったのを、洒落っ気を出して邦題を「イノベーションのジレンマ」とかにしたものだから、続編Innovator's Solutionも、「イノベーションへの解」などというイマイチな邦題にせざるを得なかった、という推測をしているのだが。


ともあれ、内容は非常に秀逸。大企業がイノベーションに成功してしまうとそれを持続し、株価のプレッシャーもあって成長を志向し続けていくため、いつの間にか顧客の要望を超えても性能・機能をアップデートしてみたり、無茶な投資をして現状の戦略に押し込もうとしてみたり、新たな破壊的プロダクトを「規模が小さいし利益率も低いからいいや」と軽視・無視してみたりするジレンマがある。さてそれにどう対処すれば良いか。


この本はその対処法に関し、顧客理解を含めたマーケティング、事業範囲の選択、組織論、人材論など多岐にわたって論じている。色々なところで読んだり学んだりした概念がリファレンスされていて、非常にうまく統合されたバランスのよい本であるという印象。


例えばマーケティングにおいては、従来のありがちなデモグラフィックなセグメンテーションではなく、顧客がそのとき済ませようとしている用事に基づいてニーズを把握し、商品をデザインし、その状況にダイレクトに訴求できるコミュニケーションをしないといけないという、機会マーケティング的な考え方が推奨されている。


また、事業範囲の選択において、ビジネススクールでもさんざんコア・コンピタンスに関する議論があったが、よくある「企業の強みに集中する」意味でのコア・コンピタンスだけだと、最終的に成長は止まってしまうという鋭い指摘。成長と利益率を持続するためには、次に何が「顧客にとって不足なポイントとなるか」「顧客が用事を済ませる上で重要になるのか」を見極め、そこを強化し、スライドしていくことが必要になる。

競争力は、単に得意だと自負する業務を行うことではなく、むしろ顧客が高く評価する業務を行うことから生まれる。


インテルコアコンピタンスのみに集中し資源を投資し続けていたら、DRAMメーカーのまま滅びていったかもしれない。
もちろん、かといって得意でないものをやってもうまくいかないので、顧客が高く評価してくれて、かつ自社がうまくやれる(または将来うまくやれる可能性のある)領域を見つけ、そこに資源を投資することが必要なのだろう。


また、大企業はいったん成長してしまうと新規事業機会に対するハードルが高くなってしまうジレンマは、僕もよく体験してきたため興味深く読んだ。1000億円企業とかになると、1億円単位の事業では成長を持続するために十分ではなく、投資の優先順位が低くなり、結局破壊的イノベーションのチャンスを逃してしまう。それに対する組織、インセンティブ、マネージャーの監督の仕方など、それほど実践的で具体的ではないにしろ、参考になる記述が多かった。


続編「Seeing What's next」もぜひ読んでみたいと思う。