フューチャー・イズ・ワイルド

Yoda2005-06-05


1年間ビジネスの勉強を詰め込まれていたので、何かビジネスに関係のない本を読みたいと思い、日本に帰ってからは江戸川乱歩中島敦を読んでいた。この本も、直接はビジネスにまったく関係ない。しかし、純粋に知的好奇心を満たしてくれた上に、ビジネスに関する示唆も多く得た気がする。


この本は2億年後の地球上の動植物の進化をシミュレートし、紹介している。一見荒唐無稽に見えるが、一流の科学者達のグループが大真面目に取り組んだようだ。地殻の変動、それに伴う気候の変化、それに適応する動植物の変化。何段階かにわけて、積み上げ式でシミュレートしている。もちろん2億年などの話だから、その正確性などは大したことがないことは明白だが、そんなことを抜きにしても、科学者達がシミュレートする動植物の面白さはなかなか。森の中を飛ぶ魚、陸上を闊歩する8トンのイカ、などが、コンピュータ・グラフィックを駆使したリアルなイラストレーションで説明されている。


示唆はいくつかあったのだが、
・科学者は、アプローチとして、過去の環境の変化に動植物がどう適応していったかを振り返り、それを未来の環境変化に応用している。つまり未来の予測にはまず過去から学べということ。これは、アンディ・グローブが自分のビジネス判断の大原則として、'過去10年を振り返り、今後10年に何がおきるかを予測する'と言っていたのとぴったり一致する。

・動植物の環境の変化に対する適応の仕方は、企業のそれに良く似ている。氷河期への移行など、激しい環境の変化が起こるときは、様々な環境に適応できる万能型(ジェネラリスト)が生き残る。いっぽう、温暖で安定した気候が続くと、様々な種が生まれ、特殊能力に秀でたスペシャリストがニッチな場所で生き残っていく。IT業界は現在、激しい環境の変化にさらされているが、キャリアたちは生き残るため、ひとつの事業に特化するより、様々な事業に投資し、どんな変化が訪れても対応できるような経営を行っている。


一読をお勧めします。